私は、平成14年大分大学大学院にて工学博士の学位を授与された。会社の許可を得て働きながらだったが、私にとって念願の学位取得であった。18歳の時学生部総会の日大講堂で、先生が「この中から、大政治家も、庶民の哲学者も---博士もいっぱい出てね、これだけが揃えば広宣流布だ」と最後に言われた一言をやっとひとつ実現できた。
私の研究テーマは「リン脂質コポリマーPoly(MPC-to-BMA)の特性と化粧品材料への応用に関する研究」で工学部教授の瀧田祐作先生が指導教官になった。この先生は、地方の国立大学では珍しく権威ある日本触媒学会賞を受賞された実力者で、学長選挙にも立候補されたことがある。地方大学であることの誇りと中央の旧帝大(東大、京大、九大等)に負けなまいと、限られた環境のなかで必死に今でも研究されている。この先生と親しく話しをする中でこんな話を教えてくれた。「大分県出身の総理大臣として、地元の誇りだから村山富市さんに、名誉博士の称号を授与し学内で講演をお願いしようと提案した。しかし社民党だし、うち学内の経済学部の教授はガチガチのマルクス経済で反対されてできなかったよ」と残念がっていた。
その話を聞いて私は「国の総理大臣経験者でさえも地方の国立大から名誉学位ひとつ与えることができないのか---」と驚いた。確かに名誉学術称号は、教授が退官して母校名誉教授になるか、ノーベル賞のような高い専門性の栄誉を得ないと授与は稀であると知っていた。しかし、池田先生はこれだけ多くの世界の大学から、失礼だが私が名前も知らなかった大学からも授与されている。しかも私立は多くがキリスト教の建学精神をもつであろう。私は韓国出張の時に、訪問した慶照大学がそうであることを初めて知った。信仰も民族も違う学内の評議会等で、先生の著作や提言を精査して授与されると聞いている。そのことが一般紙は報道がなく、聖教を見る私たちは当たり前のように、一面にトップの授与式記事をみる。だが、その学内にとっては来日しての授与自体が異例中の異例であろう。先生を尊敬しきっての授与式である。あらめて、「我々学会員が、一番先生の偉大さを知らないのではないか!」と痛感している。
私は東京農業大学の卒業生である。本年2月8日、小説『新・人間革命』本陣の章に登場した元学術部副部長杉村敬一郎(小説文中では杉町敬太郎)先生から最近メールを頂いた。そこには「私はまだまだ修行がたりません。80歳になろうとも肉体年齢と生命年齢は別であって、老人になれば修行が不要になるなんてことは無いんだということが判ってきました。必要なのは、総て確信のもとの“尽未来際”に亘る信心なのですね」と書かれてあった。農大名誉教授で「名聞冥利は広布に使う」と、ご高齢で選挙応援でもなんでも引き受ける姿に、本当の学術部員とはこういうものなのかと思った。
私は今年で50歳である、杉村先生から比べればまだ若い。現在、私は東京医科歯科大学と東京大学で開発され、日本油脂が世界で初めて工業化した合成高分子2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体を担当している。生体適合性の素材として医療材料に注目されてきたが、工業化したための様々な分野での応用展開が私に求められた。私は化粧品への用途展開で研究と営業開発でこの7年間、保湿性、刺激緩和機能等を評価して50を越える専門誌に発表した。その中には、本年2月連載「化粧品のための合成高分子(12)」にポーリング博士の話しを引用して、参考文献に池田大作著「生命の世紀への探求」を載せた。この素材は、資生堂、カネボウ、花王、コーセー、ポーラと言った大手化粧品企業は勿論、国内インターネット検索すると800アイテム以上に配合され、欧米アジア14ヶ国で採用されている。売上げも当初の月300万円程度から、今年に入ってから月に4000万円を超える素材に育ってきた。
今年はモスクワ大学で名誉学術称号を先生に授与されてから30年である。では次の30年に世の中はどう変わっているのか。米証券会社が今後30年で、日本経済は規模の上から中国は勿論、インドにも抜かれると予測している。さらに2050年には、中国、アメリカ、インド、日本、ブラジル、ロシアの順になり、ブラジル、ロシア、インド、中国の英語の頭文字をとったBRICs(ブリンクス)の時代になるといわれる。人口が少ない上に少子化傾向が止まらない日本である。今こそ個々の研究者も新しい技術分野で挑戦して機能性の新素材を誕生させていかなければならない。師の170を超える名誉学術称号の誇りを胸に、これからは本格的な弟子の戦いである。